ベースレビュー:YAMAHA BB735A 初5弦、初PJ、初アクティブ。
私は音楽好きで、エレキギターとベースをかじっています。
とくにベースに関しては、中学のブラスバンドをきっかけとして、大学ではロックとジャズの2つのバンドでエレキベースを弾きました。
腕前のほうは、褒められたものではありませんけども。
数ヶ月前のこと。
昔のバンド仲間が結婚式を挙げることになり、その余興として久々に人前で演奏をする機会が発生したわけです。
しかしひとつ、問題発生。
現存する愛機…10年以上前に安値で買った「Warwick RB StreamerLX 4st」は、オリジナルの塗装を剥がされ、市販のラッカー塗料で塗っただけの無残な姿だったのです。
この老兵を、めでたい祝いの席に持っていくのは忍びない。思い切って楽器の新調を決意しました。
で、どうせ新しいベースを買うなら、似たタイプの楽器ではつまらないと思いましたので、いっそ『5弦』に手を出してみようと考えた訳です。
結論から言いますと、選んだのは『YAMAHA BB735A('19)』。
まだ発売されてそんなに年月の経っていないモデルなので、ここでちょっとしたレビューをしてみます。
同シリーズの楽器を検討されている方のお役に立てれば幸いです。
さて、嗜好の参考までに私の好みのベーシストを挙げると、
中でも、個人的にゼンダーは別格の存在です。
私自身はピックは使えないたちで、奏法は2フィンガーです。スラップも好きですがあまり得意ではないし、バンドでは使いません。
YAMAHA BBという日本の楽器
BB735Aのレビューをする前に、ヤマハBBというシリーズ自体について、ざっと紹介いたしましょう。
ヤマハはもちろん世界的楽器メーカーで、エレキベースのメーカーとしてもそれなりの地位を築いていますが、それはあくまでもニッチな立ち位置として、のことです。
そう言い切ってしまう理由は、エレキベースメーカーの世界には不動の王者『フェンダー』がいるからです。なにせフェンダーはただでさえ歴史が古く、数々のスターを生み出してきたメーカーであります。
しかし私見ですが、我が国におけるフェンダーの地位を盤石のものにしている要因は、じつは国産メーカーにもあります。
国産メーカーの多くが歴史上、フェンダーを模したモデルやコピーモデルを作ってきた事実があるのです。
基本的にはエレキベースの基本形たる、フェンダーの『ジャズベース』または『プレシジョンベース』のどちらかに似せて製品開設するのが主流。
もちろん現代では各メーカーごとにオリジナルな形の機種も充実していて多様性が出ていますが、まだまだフェンダーの影響力は強いと思います。
まして、80年代以前の国産メーカー黎明期の頃には、「いかにフェンダーに近い音と外見をしているか」がひとつの評価指標とされていた…という時代もあったらしいです。
さて、そういう市場の中にあっても、ヤマハは70年代から独自路線を模索してきた国産メーカーでした。歴史のあるオリジナルモデル*1を擁しているんです。
前置きが長くなりましたが、その代表機種のひとつが『BB』シリーズ。
フロントにスプリットコイル、リアにシングルコイルという所謂PJタイプのピックアップが特徴で、70年代に登場して以来、有名ベーシストにちらほら愛用者を生んでいます。
愛用者の代表としては、なんといっても亀田師匠。海外を含めるなら、職人ネイザン・イーストが有名でしょうか。
そんなわけで、ヤマハBBというのは国産ベースの中では歴史あるオリジナルブランドなのです。
YAMAHA BB735Aの特徴
BBシリーズは2017年にフルモデルチェンジしています、
BB735Aは、モデルチェンジ時に区分された4つのグレードのうち、2番目のグレードにあたるBB734Aの5弦バージョンです。
最上級グレードにあたるBBP34/35と比べると、カタログスペック上はほとんど同等。しかも、BBP34/35には無いアクティブサーキットを搭載していながら、価格的にはBBPの半額!という凄まじいコストパフォーマンスが特徴と言えます。*2
特徴としては、
- BBらしい、太い音色
- 以前のBBよりもコンパクトなボディ
- BBとしては珍しいアクティブモデル
- アクティブとパッシブ両用
- コントロールは1ボリューム、1セレクター、3バンドEQ
- 弦が裏通し(ブリッジに留めることもでき、好みで選択可能)
- ハードウェアが全部ブラッククローム
- ネック裏からヘッドまでが全面、サテンブラック塗装されている
- ボルトオンネックは6点留め(マイターボルティング)
こんな感じでしょうか。
ボディサイズについて
じつは私、昔からBBシリーズの音は好みだったものの、今まで試奏してみるたびにボディの大きさが気になって、選択肢から外していました。しかしこのモデルは大幅にコンパクト化して、普通のジャズベースタイプに近い感覚で弾くことができます。なにげに、一番うれしいポイントかもしれません。
音について
出音は、しいて言うならBBの音です。
個人的にBBの音の印象は、『低音が強く出ていながらゴリゴリ感はなく、太いけれど素直な音』という印象です。
プレシジョン的なシブい野太さがあるのにモダンで品がよく、なかなかユニークな音だと思います。
倍音がそんなには出ないので、おそらくベース単品で聞いた時に「いい音だと感じる」という意味ではフェンダーの音のほうが一般ウケするかもしれません。
そういう意味で、ステージで派手なソロを弾いたりして目立ちたい人には、あまり向いていないかもです。
しかし、「アンサンブルの低音部を担当する」「リズムとグルーブの中核を担う」というベースの本分においては、とても優れた音だと思うんですよねぇ。
アクティブ回路について
BB734A/735Aはアクティブモデルで、スイッチひとつでパッシブに切替することもできます。回路自体は、同じくヤマハのTRBX600シリーズと同じものらしいです。
ちなみに購入検討時にTRBXも試奏したんですが、あちらはあまりにもフラットなキャラクターすぎて味気なく感じてしまい、私にはBBのほうが好みでした。
前のWarwickがダブルハム仕様だったので、TRBXだとあんまり変化がないということで、よりプリミティブな雰囲気の楽器にしたかったという理由もありましたが。
ということで、私にとっては初のアクティブの楽器になったのですが、いい意味であまりアクティブっぽくないというか、わざとらしさの少ない音だと思います。パッシブと切り替えながら聴き比べても、音量的にも音質的にも、ギャップは感じません。
むしろ通常はパッシブで弾いて、必要に応じてアクティブに切替えてEQを効かせたりブーストさせる、といった使い方をすることで、エフェクターに頼らずとも大体OKな音が出てしまうという印象です。
そして大事なことですが、『アクティブじゃないと使えない』楽器ではありません。ほぼ同スペックのBBPがパッシブということから分かるように、BB735Aもパッシブで何ら問題なく鳴ってくれます。もちろん、電池が切れてもパッシブでは機能します。
PJスタイルのピックアップを積んではいますが、もちろん目一杯フロントだけ、またはリアだけの音を鳴らしても、「プレシジョンベースの音」「ジャズベースのリアの音」とはかなり違います。フロントはプレシジョンより洗練されて素直な音、リアはジャズベースよりはハイがなく粒立ち感がある、という印象です。
そして、両者を混ぜるとBBの音になります。
弦が斜め45°裏通し
「弦が裏通しできる」というのも個人的にはぐっと来てしまうポイントです。もともとテレキャスターの裏通しなんかが大好きだったもので。
何が良いかって、私にとって初めての5弦ベースだったので、一番の心配事項は「5弦のテンションがゆるい」という事態だったんです。ただでさえ弦の張力が強いベースでは裏通しの採用はメジャーではありませんが、5弦なら心強い要素というわけです。
じっさい、5弦ローポジションでも問題ない程に鳴ってくれます。運指はしやすいです。
BB435との決定的相違点
ところで脇道にそれますが、購入時に下位モデルの『BB434/435』も比較のために試奏してみたのですが、なにげに違いが大きかったのはブリッジです。
434や435も意外と音は悪くなく、値段もとても安くて、十分検討に値する好感触でした。
実際に4弦モデルに関しては「人前で頻繁に演奏するわけじゃなし。安いし、これでもいいかな?」と思ったくらいです。
しかし、あなたが5弦モデルをご検討中なら、私は迷わず735Aを勧めるでしょう。
なぜなら、5弦モデルに関しては、435と735Aではブリッジがまったく違うからです。
435でもブリッジ留と裏通しは選択できるのですが、ブリッジの5弦にあたる部分だけサドルがずれて配置されているんです。弦をブリッジ留するならまだしも、裏通ししている場合、支えるべきボールエンドもなく宙ぶらりん状態になる5弦部分の寂しさよ。見た目も機能も、スマートとは言えません。
また、5弦を支えるサドルの形状そのものも735Aでは斜めにカットされており、より凝った作りになっています。
735Aと比べると、435のブリッジにはなんとも言えないチープさを感じてしまい、演奏時の感触にも影響があった…ような気がします。ささいなことのようですが、お気に入りの楽器になるかどうかって、こういうところが明暗を分けたりするものですよ。
総合的な感想
結論ですが、BB735Aはいいベース、いい買い物だったと思います。
まあ、他人に自慢できるほど高級な楽器という訳ではありませんが、楽器としての性能では必要十分というには贅沢なくらいですし、汎用性も高いと思います。
ロック、ポップ、ファンク、ブルースなどは得意分野、フュージョンにもセッティングしだいで合うかと思います。
扱いやすさという意味でも、5弦モデルではあるもののネックがかなり薄く作られており、思いのほか運指は楽です。最初こそ弦高調整に少し手間取りましたが、慣れれば大丈夫。
何より、この価格でこれだけのスペックというのは、他に類を見ないのでは。
もしBBの音が好きで、オールマイティに手軽に遊べて、しかもステージでも戦える楽器を検討中であれば、いい選択肢だと思います。
参考になれば幸いに思います。
以上です。