スタートレック:ディスカバリー シーズン3インプレッション
※『スタートレック:ディスカバリー シーズン3』の3話までの感想です。
※3話時点までのネタバレが含まれます。
『スタートレック:ディスカバリー シーズン3』が始まりました。
どうしましょう。
思ったより、あまりにも面白すぎます。
シーズン1、2はこのための準備期間だった、とさえ言えるのではないかと思います。むしろ、下ごしらえに時間かけすぎだろう、先行き心配させやがって!いい仕事してるな!
…みたいな気分です。
32世紀という、新たな地平
シーズン2のラストで決死のタイムトラベルを行ったマイケルとディスカバリー。930年も先の途方もない未来に飛ばされつつも、その未来では無事に有機生命体が生き延びていました。
今回の舞台である32世紀というのは、今までのスタートレック シリーズでも掘り下げられたことがないほどの未来です。
今までの『ちゃんと言及された中でもっとも遠い未来』は、ENTで『時間冷戦』の時空管理官が所属していた30世紀くらいまででした。
それよりさらに未来の32世紀は、まさに未踏の世界です。
さらにディスカバリーの再タイムトラベルは実質不可能となり、船はこの時代では骨董品レベルの旧式。宇宙の情勢も断片的にしかわからない。見知った種族の末裔は出てくるものの、これからの未来はまるで白紙です。
この舞台設定が、まずフロンティア精神に溢れていて素晴らしい。
さらに、従来シリーズであれば、皆の精神的な拠り所となるはずの惑星連邦そのものの行方もしれません。
でも僅かながら、かつての連邦のポリシーを受け継ぐ後継者もいて、彼らはディスカバリーを歓迎してくれる。
『自分たちが新たな連邦を見つけ、再建する』という新しいドラマ性に知性的なチャレンジを感じます。
惑星連邦の失われた世界で、宇宙艦隊のアイデンティティに向き合っていく再発見のドラマとして、否応なく今後への期待をそそられてしまいますね。
ヒューマンドラマ的な地盤ができてきた
未来での1年で大きく成長したマイケル。
彼女と強い信頼で結ばれ、誰もが認める艦長となったサルー。
精神的に強くなり、周囲から認められつつあるティリー。
スタメッツとカルバーの関係は修復され、互いを気遣うカップルに。そして意地っ張り同士のリノとスタメッツの関係も面白いです。
デトマーやオオセクン達、ブリッジクルーにも徐々に掘り下げがありそう。
そして、連邦なき無法地帯な世界を前に、水を得た魚のように活躍するジョージャウ皇帝。彼女のしたたかさとダーティさが心強いです。
シーズン2までアンバランスだったドラマ面ですが、本来ヒューマンドラマはスタートレックのお家芸であり、キャラクター達が魅力を増せば比例的に面白くなっていくのがシリーズのお約束。ついにその時が来たのではないでしょうか。
新キャラのブックやアディラも、さっそくいい味を出しています。
さらに数百年の時間の隔たりを埋める布石として、トリルの共生生物を持ってきたのも大歓迎です。いったい共生生物はどんな記憶を持っているのか、楽しみです。
牧歌的、融和的なムードが漂う
32世紀の未来では惑星連邦が失われており、地球も孤立主義をとっていて、助けを求めてきたタイタンの入植者を外敵とみなして排除するほどに排外的でした。
3話ではその仲介をディスカバリーが行うことで、対話が行われることになりました。
この筋立て自体は使い古されたような設定ではありますが、こういうことを恥ずかしがらずに豪快にやってみせるのが我らがジョナサン・フレイクス監督の真骨頂です。
むしろ、これほどシンプルに対話と相互理解というテーマを風刺して描くのは、今どき難しい芸当かもしれません。
3話については話があまりに簡単で、のんきに感じる部分もありましたが、それはむしろTOS的なノリだなあ、と思って見ていました。
大人が真面目に見るにはユルいかもしれませんが、きれいごとも人間には必要なのです。
ともあれ、今までシーズン1、2を楽しみながらも、ファン心理的に引っかかる部分を残しつつ作品に向き合ってきましたが、シーズン3になってからはそんなことほとんど気にせずに楽しんでいる自分がいます。
ディスカバリーも32世紀では骨董クラスの船だとはいえ、ダイリチウムが希少な時代に、ロストテクノロジーの『活性胞子ドライブ』を持ち込んだわけですから、この舞台設定に対しては最高にイレギュラーな存在のはずです。
場合によっては、なろう系チートスキルと化す危険性があるので、そこら辺のバランス感覚も見どころですね。
とにかく、各方面においてこれからに期待だらけの幕開けだと思っています。
『ディスカバリー』というタイトルに恥じない、新たな発見にみちたシーズンになることを期待します。
今回はブログで毎話レビューするのは難しいのですが、こうしてインターミッション的に感想を書いていこうと思います。