ヤマハYB-1 Fourインプレ 初めて乗ったバイクには特別な思い出があるもの
今までブログで一切話題にしていませんでしたが、私はバイク乗りです。
私の世代では、バイク好きは少数派でした。
我々が20歳前後の頃というのは、バイクが全然売れず、ちょうど『若者のバイク離れ』と言われた頃だったからです。バイクは嗜好品、高級品で、『お金のあるオジサンが乗るもの』でした。
そういう世代でありながら私がバイクに乗るのは、父の影響でありました。
小学校3,4年の頃でしょうか。父の駆るZXR750のタンデムシートに乗せられ、猛烈な加速とカーブのたびに訪れるバンクに、恐怖を覚えながらツーリングしたことが、私の原体験です。
まあ、怖がっていたのは最初だけで、結局、血は争えなかった訳ですが。
やがて後部座席での体重移動や先のコーナーに注意を払うなどタンデムライダーとしてのノウハウによって乗る楽しみを理解してしまった私は、父がワインディングに突入するのを待ちわびるようにもなっていきました。
そういう子供が大人になって、案の定バイクを乗り回すようになったわけです。
という訳でして、今までに乗り継いできたバイクについてインプレッションと、ちょっとした思い出を語ろうと思います。
たいした遍歴でもない若造の自分語りですが、ちょっとした息抜きに読んでいただければ何よりです。
私の遍歴
今回は最初の愛車、『YB-1 Four』について紹介していきます。
YB-1 Fourとの出会い
YB-1を初めて知ったのは中学生の頃、バイク雑誌のカタログを見ていたときでした。
自分の操縦する乗り物といえば自転車しか乗ったことのない中学生にとって、原付というのは一番身近に感じる『エンジン付きの乗り物』であり、それさえあれば『どこにでも行ける!』などと妄想を膨らませる存在です。
一種のあこがれの対象と言ってもいいでしょう。
ましてや、当時は原付なのにちょっとオシャレ感のある車種がいくつかありましたので、中学生にとってそれらが気になるのは自明の理。
マグナ50、ベンリィ、エイプ、RZ50、そしてドリーム50といった機種にワクワクしていたものです。
スクーターよりもスタイリッシュで、スーパーカブのような実用車よりもオシャレ感があり、大きな排気量のバイクをそのまま縮小したかのようなスタイルを持つこれらの車種。
いずれ中型・大型に乗りたいという小僧にとっては、じつに魅惑的に見えたものです。
その中でも、ヤマハYB-1 Fourは一際輝いて見えました。
理由は単純で、『見栄えがよかった』から。
SR400の原付版とでも言うべき、レトロなルックス。*1
メッキパーツが多く使用されていたり、シートの皮が鋲打ちされていたりと、原付の割にちょっと漂う上質感。
しかも、YBという名前はヤマハの数ある名車の中でも由緒ある名前です。
ヤマハ発動機にとってのルーツ「YA-1」の派生車種から始まり、半世紀にわたって受け継がれてきたYB-1の名。
しかも、それが4サイクルになってさらに信頼性を増したというのですから。*2
今となっては微笑ましい思考ですが、それが中学生にとってのリアルだったんです。
さて、大学生になった私は一人暮らしをはじめ、実際にYB-1を購入することになりました。
他の車種よりちょっと割高ではありましたが、何しろあこがれのバイク。他の選択肢は考えられませんでした。
初めてまたがった時は、それは嬉しかったのを覚えています。
キックスタートで、エンジンが始動したときの高揚感ときたら!
とはいえ、問題がなかった訳ではありません。
なにせミッションのバイクは初めてでしたから、当初はクラッチ操作とロータリー式のミッションに悪戦苦闘しました。
当時自動車のMT免許は持っていたのですが、フットペダルでのクラッチ操作とハンドルレバーでのそれは勝手が違ったのです。
操作に慣れるまでの間、しばらくは裏道で一人、発進とシフトアップの練習を繰り返したことを思い出します。
今となっては、それも青春の1ページですねぇ。
YB-1 Four ちょっとしたインプレッション
実際に乗っていた立場としてYB-1 Fourを紹介します。
ちょっと、長所と短所を書き出してみましょうか。
◎長所
- とにかく軽い(後輪をひょいと持ち上げて駐輪位置を直せるレベル)
- スリムで足つき良好(シート高745mm)
- 原付二種にしては大きく見られる車体(大柄な私には有難い)
- メッキパーツが多く、見た目が豪華
- 高燃費と航続距離には自信あり(燃費4~50km以上はキープしていた)
- キックスタートのみというストイック感
- エンジン音、排気音がとにかく静か
◎短所
- とても非力(3.7PS 加速が遅すぎて、幹線道路では怖い思いをする)
- 始動性があまりよくない(暖かい日でも大体チョークが必要)
- セルがない
- ロータリー式のシフトチェンジに慣れが必要
とにかくパワーが無いんですが、当時は比較対象が無かったので、あまり問題とは感じていませんでした。
しかし、大きめの国道を走るには加速力が足りなさすぎて合流で怖い思いをすることもあり、また運転が荒いことで有名な京都市内を走り回るには辛いものがありました。
実際のところYB-1 Fourは、良くも悪くも『実用車』です。
これはそもそも、YB50のバリエーションとして生まれたので当然です。
シンプル・頑丈で経済性に優れています。
ヤマハは「スポーツモデル」と銘打っていましたが、「ちょっとカッコよくしたビジネスバイク」を超えるものではありません。
そしてスポーツモデルという名に反して、走行性能はたぶん原付の中でも最低クラスといって良いでしょう。
また、「実用性重視の原付」に乗りたければ、現代にはATの積載性に優れたモデルがたくさんあります。
その中でわざわざYB-1 Fourを選ぶ要因を考えると、明らかに趣味性を重視するということになるのが本当のところです。
ですから、ちょっと背伸びしたい、どうせ原付ならちょっと格好いいのがいい、という人に限っては大変オススメなバイクだと言えます。
そういえば、こんなこともありました。
ホンダのエイプ50に乗っていた友人と連れ立って往復200km超のツーリングを敢行したのです。
原付での下道ツーリングとしては、ちょっとした距離です。
そこで分かったのは、「ホンダはすごい」ということでした。
エイプの方が加速、登坂力、始動性すべてにおいて勝っているだけでなく、無給油でツーリングを終えるという燃費の良さまで示したのでした。
カタログスペック上では両者はほぼ同じような性能で、むしろエイプのほうが高回転型でタンクも小さいはずだったので、実際のエイプの実用面での優秀さに驚愕したものです。*3
さて、性能面では物足りなさが否めないYB-1 Fourでしたが、大学生の足としては十分に役割を全うしてくれました。
それはこのバイクの信頼性の証だと思います。
このYB-1 Fourは残念ながら卒業の際に友人に譲渡してしまい、今は友人の実家で眠っていると言います。
でも初めてのバイクということで思い入れがあるのでしょう、今でも同型車を街で見かけると、つい目で追ってしまうのです。
さて大学を卒業した後の話ですが、上京した先で通勤用のバイクを買うことになるのです…。
それは次のお話ということで。
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