短文レビュー:『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』(1966) 意気込みやよし!ただ、ちょっとだけマジメすぎ?
ガメラVS敵怪獣というパターンの幕開けとして、非常にマジメな一作。
ここのところ映画やドラマの最新作について書くことが多かったので、今回からしばらく懐古趣味シリーズを書いてみたくなりました。
主に60~70年代の特撮・SF映画を取り上げて、短文レビューをお届けします。
『子供の頃に観たけど今や断片的な記憶しかなかったり、好きなシリーズなのに歯抜け的に見逃してた作品』を見返して、大人になった今だからこその、再評価すべき点や新しい魅力を紹介できればと思います。
最初は『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』(1966)から参りましょう。
『昭和ガメラは子供が主人公』『子供を喜ばすための映画』というイメージが強かったので、あらためて観た『ガメラ対バルゴン』は意外なほどに王道・正統派な怪獣映画だったことに、逆に新鮮な感覚を味わいました。
まず主人公が大人だし、ドロドロとした裏切り劇や殺人シーンまで見せていて、本筋に子供が絡んでこない。
ガメラの歌やガメラマーチもまだ無いし、子供向けに振り切れていない感が強いです。
トレジャーハンターが南の島へ行って宝を持ち帰った事が発端になるあたりは『キングコング対ゴジラ』や『ゴジラ対エビラ』に近いノリですが、それらの作品は明るいコメディタッチだったのに対して、本作は数段シリアスです。
本作は昭和ガメラシリーズとしては2作目にあたります。
ガメラが他の怪獣と戦うのはこれが最初ということもあって、随所に色々な試行錯誤があったのだろうかと思わせます。
敵怪獣・バルゴンの能力設定が難攻不落を極める。
「冷凍能力を持っているが、高熱の光線も出す」という時点でキャラが固まっていない感。
その上、南海の孤島に住んでいた怪獣なのに『水に弱い』って、一体どういう設定なのでしょうか。
要素を盛り込みすぎてやしませんか。
バルゴンの造形を担当したのはあの高山良策だそうですが、ウルトラマンというよりは『怪獣王子』っぽいゆるさを感じます。
死んだ魚のような感情のない目が印象的です。
昭和ガメラの怪獣はゴジラなどの東宝の怪獣に比べて生物感がない、突飛な怪獣が多いとはよく言われますが、眼球がとても大きい上に電飾が仕込んである独特の目がそれを体現してると思います。
大阪城や神戸タワーのセットも力が入っていて見応えがあります。
ガメラシリーズは後になるにつれ、チープ化してフレンドリーな路線を極めていきましたから、シリーズ1作目である『大怪獣ガメラ』を別格とすれば、本作はシリーズ中の異色作と言えるかも。
そういえば、『大怪獣ガメラ』のラストが本作へと直接つながっていることが示されるのも、非常にマジメといえるかも。
いつもどこからか飛んできて、戦いが終わるとどこかへ飛んでいくのが当たり前のガメラとしては珍しいことです。
昭和ガメラのシリーズ化の礎として、真摯に作られた一作だと思います。
ただ、笑えるシーンが非常に少ないのがガメラらしからぬとも言えますね。ちょっとマジメすぎたのかな?