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スタートレック:ディスカバリー 1、2話レビュー トレッキーから見た新シリーズの所感

おかえり、スタートレックのドラマシリーズ!
真価はまだ分からない…だが、私達は君を待っていたよ!

 

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※本記事は2017年9月のシーズン1 1,2話公開時点のレビューです

以降の各エピソードのレビュー、本ブログのスタートレック関連記事はこちらから。

 

 

 

 


去る9/25、ついにNETFLIXスタートレックディスカバリーの配信が始まりました。

さっそく1話と2話を視聴したので、感想を書き留めておきます。

 

 

 

12年ぶりの新作!制作してくれたことに感謝したい!

 

スタートレックエンタープライズ』(ENT)の最終回からじつに12年ぶりのドラマシリーズとなる本作。

 

ENT自体が当初の放送予定を短縮し、シーズン5で終了して性急な終わり方をした(打切りENDと呼ぶ人も…)ことに加えて、TNGDS9・VOYの3作品であらゆるネタを既出させてしまっていたことから、ファンの間ではスタートレックのドラマシリーズとしての復活は非常にハードルが高いと思われていました。

事実、ここ10年間はJJ版のリブート映画がシリーズの主体だったのでした。

 

TVからNETFLIXに移ったことが吉と出るか凶と出るかはまだ未知数です。

しかし、声を大にして言いたいのは、『日本でもほぼリアルタイムに新シリーズを視聴できる』というだけでなく、東北新社によるちゃんとした吹替まである』という至れり尽くせりの状況、本当に恵まれた時代だということです!

私は数年遅れのケーブルテレビでしかスタートレックに触れる機会が無かった世代ですから、感慨ひとしお。

 

 

どうしても受け入れがたい…クリンゴンと『戦争もの』っぽい作風

 

さて、 肝心の『ディスカバリー』の内容ですが。

現在1、2話だけ見た時点では、正直なところ『大丈夫なのかこれ…』と思ってしまう要素が多々あります。

 

もちろん、大筋では新シリーズを歓迎していますし、本作の魅力も、今後の可能性も十分あると感じていますが、どうしても不安が入り混じってしまいます。

 

私のネックは2点です。

 

  1. 正史の中の一つとして受け入れがたい
  2. 危惧していた『宇宙戦記もの』に近い作風の予感がする

 

 

1.正史の中の一つとして受け入れがたい

 

今回『ディスカバリー』の舞台は、今までの全TVシリーズと同じ世界線の物語で、時系列的にはTOSの10年前と設定されています。

 

JJシリーズの舞台となっているパラレルワールド(通称ケルヴィン・タイムライン)ではなく、あくまで『正史』なのです。

 

 

タイムラインはこんな感じですね。

 

スタートレックエンタープライズ(ENT)

<約90年>

スタートレックディスカバリー

<約10年>

スタートレックTOS

<約100年>

新スタートレックTNG

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン(DS9

スタートレック:ヴォイジャー(VOY)

 

 

このように、ディスカバリーENTとTOSの間に位置しますので、両者との整合性がとれていなければなりません

しかし、今のところディスカバリーはそのポジションで納得するには、非常に受け入れがたい

 

 

特に引っかかるのが、クリンゴン関係のデザインワークです。

外見も衣装も、TOSはおろか、ENTともケルヴィン・タイムラインともかけ離れています。

 

TOSとは制作時期が50年も違うのだから、時代に合わせたデザインの改変は必要』という意見もあるでしょうが、私に言わせてもらえば、それとこれとは論点が違います。

 

たとえば、単に『劇中の宇宙船のデザインが現代的すぎる』『技術レベルがTOSより前にしては先進的すぎる』といった部分は、ENTでも相当苦戦した部分であるし、現代の目で見てチープにならないようにという制作上の都合もあるのは理解できます。

 

しかしクリンゴンの場合、デザインの違いが最早クリンゴンという種族の文化性やキャラクター性の違いになってしまっている。

 

衣装は金色で精緻な装飾が施された鎧

艦内の装飾も連邦艦に比べ、かなり華美な成金趣味の部屋のようです。

 

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ゴールド主体のラグジュアリーな艦内

 

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船内なのに火を燃やしまくりなのはクリンゴンっぽいが。



TMP以来、一貫して作り上げられてきたクリンゴンのイメージは、質実剛健な戦士』でした。

 

彼ら戦士の文化は、広い空間で快適な生活を送ることを良しとせず、狭くても効率的な艦内で過ごし、夜は粗末な寝床で休む。彼らの関心は、戦って名誉を勝ち取り、死ぬことにもっぱら向けられている…というような文化のはずです。

ガウロン総裁マートク将軍のような高官も、その例外ではありませんでした。

TNGに登場した、クリンゴン神話の初代皇帝カーレス(のクローン)は後に皇帝に即位しましたが、彼ですら衣装は獣の毛皮。決闘を申し込まれれば自ら受けて立つという、じつに無骨な文化でした。

 

粗野で野蛮にも見えるがプライドは高く、しかし彼らの流儀にあわせて相対すれば話は通じる。

強靭で戦闘的だが、ひたすら脳筋であるがゆえに、どこかユーモラスに見えることもある。

クリンゴンとはそういう種族ではなかったでしょうか。

 

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DS9より、マートク将軍の指揮するIKSロタランのブリッジ



たぶんディスカバリーでもクリンゴンは名誉を重んじる戦士の種族』であることは変わらないのでしょうが、今回の美術デザインはまるで『悪趣味な貴族達が支配する侵略主義の悪の帝国』みたいな印象を受けます。

そのまま、MCUマイティ・ソー』に悪役で出てきても違和感がなさそうです。

 

衣装や装飾だけでなくクリンゴン人自身の容姿も、よりクリーチャー然としたものになっています。

クリンゴンの見た目が変わるのは初めてではありませんが、せっかくENTの「優生クリンゴン」で辻褄合わせをやった後なのに、何をしているのかと憤りを感じざるをえません。

 

誤解しないでもらいたいのは、『これらのデザインの出来が悪い』とか『新たなクリンゴン像を示すチャレンジ精神を否定したい』という意味ではないということです。

 

ただ、異文明間の交流を題材とし、長い歴史をもつスタートレックという作品にあって、主要な異星人の文化にこれほどの改変をしてしまっては『これが正史だ』と言われて納得することは到底できないという意味です。

 

もう一つの有名な異星人、バルカンに関しては容姿や文化の描写にほとんどブレがないことからも、ひどく違和感を覚えます。

 

 

 

続いて、2点めです。

 

 

2.危惧していた『宇宙戦記もの』に近い作風の予感がする

 以前、『スタートレック:BEYOND』の映画レビュー記事で、私はこのように書きました。

 

 

メカやバトルをフィーチャーした結果、魅力のいくつかを切り捨てた。

JJシリーズはまさに、この点が画期的でもあり、諸刃の剣だったとも言えましょう。 

 問題なのは、この傾向が今後も続いていくのかどうかです。

スタートレックの冒険ものとしての側面や、異質なものを理解し共存するという風刺性を愛する者として、この方向性がエスカレートしていくのは実に悲しいものです。

 

この傾向が長年続くことによって、取り込むファン層もカッコいいメカや派手なバトルを愛するようになっていくでしょうから、コンテンツとして最早、後戻りできない状態になってしまうのではないか…。

スタートレック『ドラマに満ちた星間冒険旅行もの』ではなく、宇宙戦争もの』になる日が来てしまうのではないか…。

 

ディスカバリーの1,2話目を見たところで、この時と同じ危惧を抱かずにはいられません。

2話までがJJシリーズよりも戦闘的でダークな雰囲気だったからです。

まさか開始して即、全面戦争の危機になるとは思いませんでした。

 

このままクリンゴンとの緊張状態の関係性を軸に、続きものの大河ドラマ方式でいくのか、従来のシリーズ同様の一話完結方式でいくのかによってもかなり左右されると思います。

一話完結方式でいくなら、エピソードごとに様々なカラーの話が出てくると思いますが、仮に続きものの大河ドラマ方式だとすると、ずっとクリンゴンをメインに据えた『戦記もの』に近くなってしまいそうな気がするのです。

 

今のところ、大河ドラマ方式の可能性が高そうだと感じます。

主人公側にもクリンゴンへの遺恨があり、クリンゴン内部にも“家を持たない白い戦士”というライバルないしサブ主人公になりうるキャラが配されているので。

 

従来のスタートレックの魅力は、1話完結方式であることに大きな恩恵を受けていたと思います。

それだけに、このままクリンゴンとの話を軸に展開していって、いずれ地球・クリンゴン戦争に至る連邦とクリンゴンとの関係性を描いていく歴史巨編的な方向性だと、今後が難しそうですね。

 

スターウォーズにおける『クローン大戦』とか『ローグ・ワン』みたいな外伝だと思えばそれでも良いのですが、何しろこれはTVシリーズの正史なのです。

 

仮に戦争ものだとしても、DS9ドミニオン戦争くらいのバランス感でやってくれれば歓迎ですが、DS9はあくまで最初から戦争だったわけではなく、かなりの下地づくりがされてからの戦争突入でしたからね…。

 

 

 

まだまだ真価は分からない

 

色々言いましたが、上記のような不安点も、新シリーズが始まってくれて、今後どうなっていくかが読めずエキサイトしている故のことだとご理解ください。


正直なところ、まだ主役艦すら出てきていない以上、文句を言わず毎週楽しみに新エピソードを享受していくのが賢いに違いありません。

 

1,2話はパイロット版のようなものでしょう。

TVシリーズ3シーズンくらいからどんどん面白くなっていくのがスタートレックです。

たとえば『未知への飛翔』の前後篇だけを見て、TNGの魅力が存分に分かる訳がないですからね。

 

何はともあれ、次のエピソードの配信を楽しみに待ち続けることにしましょう。

 

 

  

 

 

 以下、オタク全開。個別の感想点。

【※ネタバレあり!】

 

 

 

 

 

 

 

 

ミシェル・ヨーが出ると聞いてメインクルーだと期待していたのですが、まさかのゲストとは…。 良い感じのキャラクターに見えただけに残念。

復活もありうるのかな?

 

・一部で話題のクリンゴン語の字幕』は、実用性はさておき、そのこと自体がネタとして強力すぎて笑うしかない!

トレッキー一番やってほしい遊び心だと思います!企画した人は、じつにツボが分かってる。

なんたって、『独自の言語まで作ってしまった!世界観の作り込みがすごい!』…というのが、トレッキーの定番の自慢ですからね!

 

USSディスカバリーはまだお披露目ならず。登場が待ち遠しい!

 

 ・USSシェンジョウのネーミング元は神舟なんですね。

「中国に媚びている」という批判めいた意見も見ましたが、そういう方はUSSヤマトとかUSSアカギとかUSSコンゴアキラ級などなどの存在をご存じないと見えます。

ミスターカトーホシ・サトウケイコ・オブライエンの例を挙げるまでもなく、むしろ日本のほうが今までかなり優遇されていました。

確かに昨今のハリウッドなどで中国資本の影響力が強いとは聞きますが、SFドラマに対してそういう見方をしていて楽しいのかな。

 


『Mr.特殊メイククリーチャー』(と私が勝手に呼んでる)ダグ・ジョーンズの演ずるサルーはとてもいいキャラになっていく予感。

やっぱり目線やジェスチャーの演技力がすごい!

人間離れした体型もバッチリ。

私の中でウルトラマンに入ってもらいたい俳優ナンバーワンです!

臆病で慎重派なインテリということで、ヘルボーイのエイブっぽいキャラになるのかな?

 

 

・主人公のマイケル・バーナム中佐はルックスがとても印象的で、象徴的な美人ですね。

バルカンに育てられてバルカンの哲学に染まっている設定のようだけど、全然そうは見えない。

若く優秀だが、その裏返しで自意識過剰な副官という感じ。

そういう要素は初期のライカと似ていますが、彼は協調性やユーモアも持ち合わせており、人間関係づくりも得意だったので、比較するとバーナム中佐はひたすら余裕が無いように見えます。

 

・最後、バーナムはいきなり軍法会議終身刑になってしまったけれど、ここからトム・パリス的展開でUSSディスカバリーに乗艦することになるのかな?

 

 

 

 

本ブログでは今後、できうる限り毎話レビューを書いていこうと思います。

 

リアルタイムで視聴できる幸せを噛みしめ、その気持ちを忘れないようにね。

 

 ↓

 

 

ついに開始したシーズン2 第1話のレビューはこちら

 

 

 

 

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