『タイ王立空軍博物館』航空ファンにたまらないタイの隠れスポット
昨年のタイ旅行で、異国情緒満載の『タイ国有鉄道』に遭遇するという、じつに味わい深い体験をしました。
その時の記事はこちら。
それでですね。
今年も行ってまいりました、タイ王国。
そして今回ご紹介するのは、『タイ王立空軍博物館』です!
はじめに
皆さん、「タイで観光」と聞いて、どんな過ごし方を思い浮かべますか?
ショッピング、マッサージ、リゾート、古い寺院や史跡の見物、あるいはインスタ映え…。
たしかにどれも良いリフレッシュになることでしょう。
しかし、せっかくの異国体験ですよ。
『タイ国鉄』のように、現地の生きた文化や、身近な歴史に触れるのも乙なものです。
というわけで、今回は日本人観光客にあまり知名度のなさそうな隠れスポット『タイ王立空軍博物館』をご紹介します!
歴史的に興味深い展示があるだけでなく、
レトロ趣味の航空機オタクには垂涎ものの展示が多数ありました。
しかもそれに触れたり、そうでなくても至近距離で写真も撮り放題。
それでもって、入場無料。
なにしろメカの好きな方には必見の内容だったので、写真をまじえてレポートします。
※注意点
私が訪れたのは2020年2月初頭だったんですが、博物館はちょうど改装工事の真っ最中でした。
係の士官の方に聞いたところ『いま展示は不完全だが、それでもいいなら勝手に見物していていいよ』と言ってくれたので、なるべく作業員の方々の邪魔にならないよう見物したのが今回のレポートになります。
今後、大きく展示内容が変わっている可能性がありますので、その点はご容赦を。
タイ王国と王立空軍について
今回、タイ王国と空軍の歴史をにわか仕込みで勉強したので、まず『王立空軍』についての説明をば。
メカが見たい方は、次の章まで飛ばしてもらって結構です。
タイ王国は言わずもがな、インドシナ半島とマレー半島にまたがる国です。
西はミャンマー、東はラオスとカンボジア、南はマレーシアと隣接します。
立憲君主制を布いていますが、日本の皇室やヨーロッパ各国の王室に比べると、今でも王室の政治的な影響力がかなり色濃く残ります。
じっさい、バンコクの街中を歩くと、現在の国王であるラーマ10世の肖像がいたるところで見られますし、「国王陛下万歳」的なディスプレイやモニュメントもたくさん存在します。
またそれゆえに、いまだに不敬罪が存在するなど、ある種の言論統制も残っているらしいです。
現在の王朝は200年以上続く歴史を持っています。
これはつまり、西欧列強の帝国主義が世界を席巻した頃でも独立を保ち続けたということで、東南アジアの国々の中では珍しいと言えるでしょう。
日本とタイの類似点としては、第一次大戦前から軍備の近代化に乗り出していたこと。
『王様と私』も有名ですが。あれもタイの王様とイギリス人教師の話でしたよね。
なにせ、博物館での王立空軍の歴史についての展示も、ライト兄弟の説明から入るほどです。当時のラーマ5世が黎明期の軍用機に乗っている写真もあり、アジアの空軍としてはかなり由緒ある存在だということが伝わってきます。
で、その王立空軍はバンコク郊外の『ドンムアン国際空港』に隣接する空軍基地司令部を構えているのですが、それに隣接して設置されているのがこの『タイ王立空軍博物館』です。
余談:
近代化に熱心だったのは海軍も同様だったらしく、日本製の軍艦『メークロン号』などを輸入して早くから運用していたそうです。
この艦は第二次大戦の戦火をくぐり抜けて現存しており、いまは記念公園の一部として展示されているとか。今回私は行けなかったのですが、下記URLに詳しいので、海軍好きの方はぜひチェックをば。
やはり、当時の帝国主義。植民地主義のうずまく世界情勢の中で、独立を保つことの苦労を伺わせますねぇ。
戦争なんて、しないにこしたことはありませんが、当時の情勢からして独立を守るためには軍事力の裏打ちは必須だったのでしょう。
そして第二次大戦におけるタイは、一時は日本の同盟国でした。
タイの第二次大戦における立ち振舞いに関して詳しく知りたい方は『タイ・フランス領インドシナ紛争』などで調べてもらうと面白いかもしれません。
また、古来からとにかく仲の悪い隣国ミャンマー(ビルマ)との、幾度にも渡る『泰麺戦争』の歴史も興味深いですよ。(私も勉強中です)
まったく、どこも隣同士は仲が悪いのが常ですねぇ。
展示内容Part1 WW2のレジェンド級が目の前に!
ちょっと筆が滑って前置きが長くなりましたが、ここからはメカファンの方はお待ちかね。
『タイ王立空軍博物館』の実際の展示をご覧いただきましょう。
多くは実際にタイ空軍で運用歴のある機体ですが、ほとんどは国外製であり、動態保存はされていません。
だいたい、年代別に紹介していきます。
浅学ゆえ、もし解説が間違っていたらご容赦くださいね。
最初は、主に第二次大戦以降の機体を紹介していきます。
で、いきなりキラーコンテンツです。
いきますよ?
スーパーマリーン スピットファイア Mk.XIV
軍用機を愛する人で、かれの存在をしらない人などいるのでしょうか?
第二次大戦のメカ好きで、かれに憧れたことのない人間がいるのでしょうか?
『スーパーマリーン スピットファイア』。
バトル・オブ・ブリテンの立役者。第二次大戦、レジェンド中のレジェンド。
残念ながら、保存状態が良好とは言えません。間近で見ると、とくに劣化が目立ちます。
でもこの美しいフォルム、マーリンエンジンを伺わせる排気管、プロペラの経年劣化具合まで確認できる状況で、興奮を抑えられるでしょうか?
このときばかりはカメラ小僧と化すしかないですよ。
初っ端から感動ものですが、まだまだ続きますよ。
F8F ベアキャット
スピットファイアを持ってきたらば、展示機の中で対抗しうる第二次大戦のレジェンドは彼になるでしょう。
アメリカ製らしくて無骨な印象で、個人的には大戦期の中でも上位にくるフェイバリット機種です。
機銃の軸が曲がりまくっていますが、そこはご愛嬌。
T-25 トロージャン
つづいて、こちらも年代物の練習機『T-25 トロージャン』
塗装といい、経年具合といい、格好良すぎるとは思いませんか。
そうでしょう、そうでしょう。
野外放置スタイルの展示なので、ウェザリングの資料にもってこいですね。
SBC2 ヘルダイヴァー
艦爆をですね。こんな格納状態で展示されてしまったら、両手をあげて降参するしかありませんよね?
スピットファイアもそうですが、写真や模型やゲームでしか見たことがないような機体の実物を目にすると、意外とボリューミーでグラマーな機体にクラクラしてきます。
これが本物の迫力か。
油圧シリンダーやボルトの一本一本を目にできることが、ひたすらありがたい。
フェアリー ファイアフライ
イギリスの艦上戦闘機ですねぇ。
なにしろ翼の格納方法がイカしすぎていますよねぇ。
どの機種もそうですが、木製のプロペラは腐食が進んでおり、当機ではすでに途中から折れてしまっていました。
細かいことは気にしない、おおらかにいこう。
ここは微笑みの国です。
展示内容Part2 戦後を支えた名機!
続いて、もう少し時代が下って、50年代~ベトナム戦争期あたりまでを支えた機体もご紹介していきましょう。
F-86Fセイバー
Mig-21 フィッシュベッド
なんと旧ソ連製の機体まで。
これこそ、フライトシミュレーターで何度飛ばした機体だったか。感激。
この『ジェットエンジンに羽をつけました』みたいなシンプルさがたまりません。
RT-33A シューティングスター
あくまで練習機とはいえ、この独特のフォルムに惹かれてやまないです。
機種の形がマッコウクジラみたいで良くないですか?
展示内容Part3 ベトナム以降!
続いて、さらに近代にまいりましょう。
ベトナム戦争期からこっち、現在までの機体たちもご紹介していきます。
F-5E タイガー
この空軍博物館について、もっとも特筆すべきポイントかもしれません。
とにかく、F-5に対する愛が尋常ではありません。
博物館の中だけでも、なんと5機のF-5が展示されていました。
それぞれ展示方法がまったく異なり、趣向が凝らされていましたよ。
どうしてF-5がそれほど優遇されているか知りたいですが、ともかく格好いいので良しとしましょう。
ホーカー・シドレー・ハリアー
なんとVTOL機までも。
タイ王立空軍では軽空母に搭載され、艦上戦闘機として運用されていたそうです。
相変わらずオンリーワンなルックス。美しいですねぇ。
F-8 クルセイダー
リセプタクルを展開してくれているのが嬉しい。
インテークまわりのマーキングがいいですねぇ。
私としては、イントルーダーとセットで愛してしまう機体です。
F-16 ファイティング・ファルコン
出ました、ド定番のF-16です。
たしかに名機に違いないのですが、今も現役ですし、正直ありふれているのでレア度は低いですね。
日本の航空祭やフレンドシップデーで、飛行している姿も見ることができますからね。
今回ばかりは、このあとにつづくお方の前座をつとめて頂きましょう。
SAAB 39 グリペン
個人的に、今回の最大の収穫が、彼です。
スウェーデン空軍が自国内のニーズに答えるために開発した多目的戦闘機ですが、私は昔からこの機体が好きで、世界一美しい戦闘機だと思っているほどなんです。
奇抜さはないものの、ラファールやらタイフーンよりも気品があります。
短い滑走路(なんなら普通の高速道路)からでも離着陸できる、器用な性能をもっています。
スウェーデンはじめ、ハンガリーなど西欧のわずかな国にしか配備されていないと思っていたので、アジアでも採用されているとは初めて知りました。
そんな高嶺の花をまさか、こんな間近で見られる日が来るとは。
しかもこの展示、側面に階段がついていてコクピット横まで登れるんですよ。
同じアホなら、登らにゃ損、ってものです。
興味を持ったらぜひオススメ!
いろいろ語りましたが、正直なところ、今回の記事で紹介できているのは展示内容の半分以下だと思います。
(改装工事のせいで閲覧できなかった箇所や、なんの展示もなかった部屋も多かったのです)
興味の湧いた方はぜひぜひ、ご自分で行かれてみることをおすすめします。
(その頃には改装作業も終わっていることでしょう)
新しい分野への扉が開いてしまうかもしれませんよ。
しかも、これだけの機体が見られて入場料は無料。さすが王立。
アクセスについて
最後に、アクセスについて簡単にご説明します。
ドンムアン空港から:
空港からならタクシーで10分ほどで着きます。
ちょうど空港の裏手にあたるので、ぐるーっと周囲を回り込むことになります。
Grabアプリで配車すれば確実です。
バンコク市街から:
BTSでカセサート大学駅(N13)まで開通ずみですが、そこからはGrabアプリでタクシーを呼ぶのがいいです。20分くらいかかります。
いずれはBTSがドンムアン空港に直結する予定らしいので、数年後にはアクセスが格段によくなっているかも。
鉄道ファンなら:
せっかくなので、大規模な始発駅であるフアランポーン駅から乗ってみることを強くおすすめします!
(ただし列車の本数は1~2時間に1本程度。ものすごく少ないので注意!ようやく乗っても4~50分くらいはかかります。)
以上、お楽しみ頂けたでしょうか?
では、今回はこのへんで。