スタートレック︰ディスカバリー シーズン1 15話『新たなる旅立ち』レビュー
ついにディスカバリーもシーズン1最終話!
クリンゴン戦争の終結と、新たな旅への出発を描きます。
スタートレック:ディスカバリー
Season 1 Episode 15
『新たなる旅立ち』
原題:"Will You Take My Hand?"
【本記事は視聴済みの方向けのレビューです。ネタバレを含みます!】
さて、スタートレックのシリーズ最新作『スタートレック:ディスカバリー』もついにシーズン1の最終回を迎えました。
佳境を迎えたクリンゴン戦争はどうなったのか、15話を振り返ってまいりましょう。
・決死のクロノス潜入作戦決行!
ディスカバリーは前回の計画通り、クロノスの地下洞窟に直接ジャンプする大胆な作戦を決行することに。
ものすごく難しそうなジャンプなのに、余裕を見せながらこなし、軽口をたたくスタメッツ。もはや熟練者の風格です。
しかし、未だに連邦船が普通に大気圏内を飛んでいる光景にはちょっと違和感があります。
同時代ではケルヴィン・タイムラインのエンタープライズが『イントゥ・ダークネス』で大気圏内飛行はおろか水中潜航までこなしていたのは記憶に新しいですが、あれはあくまで24世紀の技術の影響があった改変世界での話なので。
まあ、そうでなくとも『スタートレック4 故郷への長い道』などでバード・オブ・プレイが大気圏内で普通に飛行していましたので、23世紀の連邦の技術水準でも可能なのでしょう。
むしろ、今までのシリーズでは予算や技術面の都合で描けなかったという事情もあると思います。(ヴォイジャーの着陸も結局数回だけでした)
ここはディスカバリーの予算の充実と特撮技術の進化を喜ぶべきですね。
・クリンゴンの母星・クロノスへ潜入するためにはオシャレなコスチュームが必須
上陸班を編成してクロノスへ潜入し、情報収集をすることに。
やっぱりというか、上陸班を陣頭指揮するのはジョージャウ皇帝です。
黒で統一したスタイリッシュなコスチュームを着込んで、そのままマトリックスの世界でカンフーでひと暴れできそうな集団の出来上がりです。
なにせ、カンフーアクションで鳴らした、かのミシェル・ヨーです。
クロノスの地表は今までも数回映像に出てきていますが、今回はオリオン人に割譲された土地でありスラム街っぽい街並みで、なかなか面白かったですね。
通りに屋台が並び、東アジアの露店街の雰囲気。
それとハイテクなホログラム映像のコントラストが、そこはかとないブレードランナー感を醸し出します。
ティリーがドラッグ的なガスでトリップしたりした結果、ジョージャウの真の計画が明らかに。
それは『地底で水蒸気爆発を起こし、クロノスを人の住めない環境にする』というものでした。
想像を絶する規模の破壊的な作戦。
さすがテラン帝国流だけあって、まったく容赦がありません。
・ここにきて『連邦の理念』を貫く勇気
マイケルがジョージャウの作戦に反発し、コーンウェル提督に直談判するシーン。
そして、彼女の言葉に同意を示すクルー達。
じつに感動的でしたね。
マイケルがその境地に至ったのは、15話かけての体験の下地があってこそです。
かつて、マイケルは連邦の規則を破り、クリンゴン戦争の火種を作りました。
結果、大切な人を亡くし、キャリアも棒に振り、反逆者の烙印を押され。
自責の念にかられながら落ちぶれ果てるだけと思われました。
そんな彼女の前にロルカとディスカバリーが現れ、マイケルは再び艦隊士官としての道を歩み始めます。
そして、戦争という極限状態の中で、様々な体験をしていくことになりました。
『生存と支配のために手段を選ばない、信念なき暴力』 ロルカとテラン帝国
『信念を貫き通すことにより生み出された悲劇』 ヴォーク=タイラー
それらを目にして、マイケルは信念をつらぬくことの難しさ、そして尊さを感じたはずです。
だからこそ、今回マイケルは戦争に勝つために連邦の理念に背き、多くの生命を失わせる手段を選ぶのではなく、『理念のために新しい道を切り拓く』という選択をした。
それは非常に自然なことに思えます。
思えば、今作は当初から『スタートレックらしくない』とファン達に言われていました。
それは、今作の持つ作風。とくに従来のシリーズに比べて好戦的であったり、相互理解や共存の道を模索しないことが大きな要因でした。
従来のシリーズを見てきたファンは、ディスカバリーのキャラクター達が『他の過去シリーズのクルーのように、連邦の理念に沿った行動をとらないのが不自然だ』と感じていたのです。
しかしながら、ディスカバリーという物語にとっては、それは計算づくのことであったのでしょう。
なぜなら、本作はシーズン1を通じて、『いかにして惑星連邦は、自らの掲げた理念を(ただのお題目でなく)遵守するようになったか』ということを描いたのではないでしょうか。
このディスカバリーの物語があったからこそ、後世の惑星連邦は真に自分たちの掲げた理念を尊び、いかなる苦難の途にあっても理想を追求する姿勢をとれるようになったとも考えられます。
いつの世も、人類は常に学び成長するもの。
ディスカバリーの時代は、惑星連邦がクリンゴン戦争という大きな試練に直面して、連邦が連邦であるためのアイデンティティを確立するという時期だったのでしょう。
まあ、戦争の終結に関しては散々こじれた経緯の割にはあっさりと終わったりはしましたが、そういう描写がスタートレックについて重要でないのはファンの方はお分かりのはず。
わずか15話のドラマの中で紆余曲折がありつつも、着地点に収まったのではないでしょうか。
良い物語だったと思います。
・ルレルの新体制。クリンゴンはどこへ行くのか
ところで、最終的にマイケル達はルレルを担ぐことでクリンゴンの名家を統一させる道を選びました。
それはいいのですが、ルレルが連邦の力(ハイドロ爆弾)を背景にしたこと、タイラーが彼女のそばにいるという事実は、今まで功を競い合っていたクリンゴンの名家にとって面白くないはずで、非常に不安定的な手段だったようにも思えます。
このルレルを中心とした動きがTOSの統一されたクリンゴン帝国につながるということなのでしょうが、この後クリンゴンの内政がどうなるのかが気になるところです。
・最終エピソードにふさわしい『超大物ゲスト』登場
晴れてサルー臨時船長のもと、新しい旅に出たディスカバリー。
サレク大使を乗せバルカンに向かう道中、さっそく救難信号を受信しました。
信号の主は、他ならぬ『NCC-1701 USSエンタープライズ』!
このサプライズはファンにとっては非常にうれしいものです。
船籍番号が「NCC-17…」までディスプレイに表示された時の「まさか…」という興奮!
そしてTOSのテーマ曲が流れ、ディスカバリーの物語がこの先、TOSへとつながっていくことを暗示します。
TOSのパイロット版『歪んだ楽園』は西暦でいうと2254年の事件と設定されており、カーク船長によるファイブイヤー・ミッションよりも約10年前にあたることから、だいたいディスカバリーと同じくらいの時期にあたることが指摘されておりました。
その時期、エンタープライズはクリストファー・パイク船長の指揮下にありました。
ついに登場したエンタープライズの外観について見てみましょう。
先日ホログラムで登場したUSSディファイアントとは本来同型艦のはずですが、今回はかなり形状が異なるようですね。
エンタープライズのシルエットはほぼTOSのオリジナル版に近いものの、ワープナセルはケルヴィン・タイムライン版も思わせる重厚さですし、パイロン、ドーサルネックなどの造形はTMPの改装型も思わせますね。
あと、注目すべきはワープナセル後端の部分です。
TVシリーズ版のエンタープライズはここにピンポン玉が埋め込まれており、半球状のパーツがついていましたが、パイロット版『歪んだ楽園』の段階ではそれがなく『噴射口のようなブツブツとした穴』が空いていました。
今回の意匠はそれを意識している感じにも見えます。
そうだとしたら、時系列的にもうれしい配慮です。
さて、ディスカバリーの1話から続く一連の物語は終局を迎えましたが、これからの彼らの冒険に期待が膨らみます。
さて、シーズン1が終わりましたので、毎話お届けしてきた当ブログのレビュー記事シリーズも、これでひと区切り。
シーズン2の開始時期はまだアナウンスされていませんが、また発表され次第、当ブログでも追いかけてゆこうかと思います。
ついに開始したシーズン2のレビューはこちら
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