スタートレック︰ディスカバリー シーズン1 14話『外なる戦い、内なる戦い』レビュー
ついに帰還を果たしたディスカバリーの前に、過酷な戦況が立ちふさがる。
クリンゴンとの戦争を終わらせるべく、起死回生の作戦が始まる!
スタートレック:ディスカバリー
Season 1 Episode 14
『外なる戦い、内なる戦い』
原題:"The War Without, The War Within"
前回、数多くの障害を乗り越えて鏡像宇宙からの帰還を果たしたディスカバリー。
彼らの前にはどのような試練が待ち受けているのか。
シーズン1も、今回含めて残り2話と佳境を迎えています。
・戻ってきたのはいいけれど
そもそもディスカバリーは、惑星パーヴォでのサルコファグスとの対決で『クリンゴンの遮蔽装置を見破る方法』を見出し、それを連邦本部へ情報共有しに行く為のジャンプで、図らずも鏡像宇宙へジャンプしてしまったのでした。
メインクルーがクリンゴンや鏡像宇宙からのスパイだらけだったことが判明したり、鏡像宇宙のジョージャウ皇帝を連れ帰ったりしつつも、何とか元の宇宙に帰ってきたのが前回まで。
ところが元の宇宙では、ディスカバリーのいない間に9カ月もの時が流れていたのでした。
遮蔽装置への対抗策をもたぬ連邦は、クリンゴンに敗北を重ね。
一方のクリンゴンはコルという指導者を失い、名家どうしが競うように連邦に攻め入って、殺戮の限りを尽くしている始末。
この状況を終わらせるべく、ディスカバリーが起死回生の一手を放ちます。
・コーンウェル提督の生存を確認と、サレク父さんの有能ぶり
たぶん世界ひろしといえども、コーンウェル提督の安否を気にしていたファンはかなり少数派ではあるまいか…。
そう思わせるほどに扱いのひどいコーンウェル提督ですが、今回ついに再登場し、元気な姿をお茶の間に見せてくれました。
しかも、経緯を知る我々からすれば今更感あふれる、『ロルカの狂人疑惑』と『ディスカバリー失踪の謎』という古すぎるネタをひっさげての再登場です。
提督本人視点では仕方がないことですが、ポンコツ感を否定できません。実に不遇です。
サレク父さんが一緒に来てくれて、本当によかったと言わざるをえません。
そのサレクは鏡像宇宙でも見せた必殺技、精神融合での『ややこしすぎる経緯の一発理解』をもってして、スマートに話を先に進めます。
鏡像世界の存在やロルカの裏切りと死までを柔軟に受け入れる、論理的思考力に幸あれ。
関係ないですが、鏡像宇宙のレジスタンス組織にいた例のアンドリア人が、提督つきの艦隊士官として登場したのが地味にうれしかった。
TOS以来の種族であるアンドリアやテラライトは連邦の初期メンバーでもあり、かれらが登場すると嬉しさを覚えてしまいます。
・クリンゴン戦争の戦況
どうやら、かなり厳しい状況の模様。
連邦は領域を2割も失い、主要な宇宙基地も陥落。
『事実上、地球の裏庭に入りこまれた』と提督が言っていましたが、連邦がここまで壊滅的な敗北を喫しているとは。
地球はソ連参戦後のベルリンみたいになっているのでしょうか。
クリンゴンがどれだけ強力なのかという話ですが、その優位性はまだ遮蔽装置に頼ったものなのかも気になるところです。
コルの死亡で、遮蔽装置の供与元が無くなったはずですが、いかに。
・ヴォークの呪縛から逃れたアッシュ・タイラー、贖罪の道
どうやら、ルレルの執刀した手術は成功していた模様。
今はタイラーとしての人格で安定し、ヴォークとしての記憶も持ち合わせているそうです。
クリンゴンでも人間でもない存在になった彼は、自らが何者なのかも分からないまま、自分の犯した罪に向き合うことになります。
サルーのとった措置はスタートレック的な人道措置にもとづくものですが、その結果スタメッツと相対した時の彼の心痛は如何ばかりだったでしょう。
そんな中で、真っ先に彼に再生への手を差し伸べるティリー。
この子は本当に、ディスカバリーの清涼剤のような存在ですね。
『困った人を見たら、放っておけない』『あんな目に遭って、大丈夫なわけない』という純粋な動機で動ける彼女は素晴らしい。
マイケルとの対面は、お互いに心底求めているからこその切なさがありましたね。
タイラーが人間としての自分を確立し、幸せをつかめることを願ってやみません。
贖罪のための自己犠牲とかに走るのは、やめてほしいなぁ。
・ジョージャウの授けた戦法とは
鏡像宇宙出身のジョージャウ皇帝をもとの世界に連れてきた訳ですが、その存在がドラマ上の大きな厄介ごとになるかと思いきや、「そう絡めるか!」と感心するような展開でした。
なにせ彼女のテラン帝国は、『クリンゴンに勝った実績のある』存在ですから、窮地に立たされた連邦の救世主にもなりうるというわけです。
彼女の知恵で船ごとクロノスへのジャンプ&地表に潜入しての敵地調査という大胆な作戦を授けられたわけですが、なにやらサレクへは別の作戦も授けた模様。
サレクの「今生の別れ」のような言葉といい、非常に気になるところです。
小ネタですが、『クロノスに訪れるのはアーチャー船長のエンタープライズ以来』という言葉が出てきましたが、これは言うまでもなくスタートレック:エンタープライズの主役艦であるNX-01エンタープライズのことです。
エンタープライズは処女航海でクロノスへ赴きましたからね。連邦設立以前のことです。
ディスカバリーより以前の時代設定のシリーズは ENTだけですから、シリーズ内の関係性の出にくい本作にとっては、ENTは比較的言及しやすい存在でしょう。ちょっとしたファンサービスとして嬉しい限りです。
・胞子の促成栽培
胞子を使い果たしてしまったディスカバリーが、生命のない星にて胞子の促成栽培を行いました。かなり幻想的な風景。
見る見るうちに生命が根付き、菌類が芽吹く様子は、映画2,3作目でのジェネシス計画を思い起こさせますね。
・ジョージャウ船長…?
なんと、ジョージャウ皇帝はディスカバリーの船長に就任しました。
コーンウェル提督の差し金ですが、さすがに危険な決定のように思えます。その真意やいかに。
ジョージャウ皇帝自体、かなり危険な存在であることはわかっていることと思いますが…。
前回、サルーが船長として大きく成長を見せてクルーたちにも信頼を勝ち得ていたあとだけに、余計に 不可解です。
・デトマーがかわいい件
今回はデトマーにセリフがあり、食堂でのタイラーとティリーとのシーンや、ブリッジのシーンでも印象的でした。
彼女もシェンジョウからの生き残り組ですから、ジョージャウやサルーとも絡んでドラマに参加してほしいところです。操舵手はだいたい美味しいポジションのはず。
サイバネティックスを埋め込んだ経緯も知りたいし…。
というか、個人的には非常に女優さんがかわいいので、もっと活躍してほしいだけだったりしますが。
さて、次回はいよいよシーズン1最後のエピソードです。
これだけ広がった話を、どこまでまとめ上げるのか。
また、制作の決定しているシーズン2にどれだけ引っ張るのか。
楽しみに待つとしましょう。
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